アメリカの憲法では、万が一政府が憲法の精神から逸脱した際を想定し、修正第二条において人民が武装する権利を認めています。この権利を守護すべく、ありとあらゆる政治的圧力を用いてきた銃規制反対派の牙城、全米ライフル協会が米連邦破産法11条(チャプター11)に基づく民事再生を申請しました。

全米ライフル協会(NRA)は19世紀末の南北戦争後、民間人に対して銃や射撃に関する意識を高め、教育するべく誕生しました。当時は銃の性能も低く、銃を正しく扱える人もそう多くなかったため、国軍の強化には国民全体を銃に関して啓蒙する必要があったようです。

射撃クラブ的団体として誕生したNRAは全米各地で射撃場の運営、競技の主催を行う一方、戦中・戦後の銃規制の強化に対して抵抗を続け、その流れが現在の圧力団体的NRAにつながります。70年代には保守派である共和党とのつながりを深め、より強固に人民の武装する権利を主張するようになりました。

現在では会員数550万人、収入400億円という強大なロビー団体となりましたが、反面、3年で6400万ドルにも及ぶ予算の私的流用や投票権をもつ会員の買収などの不正も明らかになってきました。

そこでニューヨーク州検事総長レシティア・ジェームズは、これらの不正行為がニューヨークの非営利法人運営に関する法律に違反するとしてウェイン・ラピエールをはじめとする幹部陣を2020年8月に訴追しました。

NRAはこの動きに対し手続きを遅滞させ、かつ敗訴しニューヨーク州から解散を命令されてしまうのを避けるため、NRAが100%出資するテキサス州の有限責任会社Sea Girt社と共に米連邦破産法11条(チャプター11)に基づく民事再生をテキサス州に申請。このSea Girt社と共にテキサスで再生プロセスを実行するよう手続きをすすめています。検事総長は「NRAが自らの責任を逃れるべくこうした訴訟戦術を使うことを断じて許すわけにはいかない」とコメントしています。

NRAの移転を歓迎するテキサス州知事。

アメリカでは選挙のたびにNRAが銃規制派の候補をこき下ろす、という風景が見られるほどに政治と強く結びついていますが、今回、かなり過激な動きとなったのは大統領選挙において規制派のに近い民主党が政権を取ったことを鑑み、裁判でも不利な状況になる見通しとなったためと考えられます。

実際の所、アメリカの市民生活には銃が溶け込んでしまっているのも事実。政治の舞台における論争の道具としての銃規制はよく取り上げられますが、今回のNRAの動きで銃社会、銃のある文化は強い変化を求められるものと思われます。
ウェイトレスさんが全員実弾入りハンドガンで武装しているレストラン「シューターズ・グリル」に行ってきた – DNA

ソース:NRA Dumps New York to Reincorporate in Texas