非合法な任務につくスパイに「書類上は紛失したことになっていて追跡することができない銃」を支給する、というシーンが映画や小説では時々見られます。しかし先日、AP通信が行った調査では、アメリカ軍では不注意の紛失や横流し目的の盗難などによって、相当数の銃器が行方不明になっているそうです。


AP通信の調査によればこの10年で少なくとも1900丁の軍用銃の行方が分からなくなっているそうです。その多くは自動小銃(1179丁)と拳銃(694丁)ですが、軽機関銃(74丁)やグレネードランチャー(36丁)といった民間人では入手できない強力な火器も含まれています。

紛失の理由は様々で、単なる不注意もあれば盗難もあります。深刻なケースでは、武器を管理する係の人間が書類や管理システムを操作し、保管数をごまかしたり、廃棄したことにして流出させることもあります。武器係は兵器の製造・改造のノウハウを持つ者もおり、軍向けに限定された改造パーツを流出させた事件も過去に発生しています。

10年で1900丁、平均して1年で190丁というのはそれほど多くない数字に見えます。ただしこれは紛失したという記録が、なんらかの形で残されているものに限った数字で、例えばニューヨーク州アルバニーで犯罪に用いられた軍用拳銃は、約1000km離れたノースカロライナ州フォートブラッグ基地にあるはずのものでした。書類上は2年もの間「部隊から部隊への輸送中」になっており、同じように紛失したことさえ判明していない銃が相当量あると考えられます。

2016年にスイス軍は69丁を紛失しこのうち17丁を発見したというデータがありますが、アメリカ軍とスイス軍の規模や活動範囲の差を鑑みれば、年平均190丁というのはあまりにも少ない数字といっていいでしょう。

流出した火器はインターネットオークションなどを通じて売却され、犯罪に用いられることも少なくありません。FBIの調査では2010年代に22丁の軍用銃が犯罪に用いられたことがある、とされていますが、これは合法的に払い下げられた軍用銃も含んだ数字とされています。

実際のところ、軍を含めてどの機関も盗まれた数や時期を正確に把握していません。2020年秋にある事件で海兵隊のグレネードランチャーが押収された際、海兵隊側が紛失を把握していたものの中には押収されたもののシリアルナンバーが含まれていませんでした。

携帯型の誘導対空ミサイルなどと比べると、小銃や拳銃、機関銃といった「ローテク」な武器の紛失は軽視されがちですが、アメリカ軍という巨大組織が元にあるとなると、その影響は計り知れません。

2014年ごろ、いわゆる「テロとの戦い」が一段落して、軍の払い下げ装備が国内の警察に急速に分散したことがあります。この時は警察の重武装化を憂う声が大きく高まりました。現在米軍はロシアや中国といった勢力の拮抗した仮想敵との戦いにシフトしつつあります。再び旧型の装備がダブつけば非合法なルートでの流通も増えることは想像に難くなく、アメリカ軍は何らかの対策を取る必要があるといえるでしょう。

警察が軍の払い下げ品を使っているアメリカの自治体をインタラクティブマップ – DNA

ソース:AP: Some stolen US military guns used in violent crimes