野生動物は、できれば人間の少ないところに移動させて数を増やしたいところですが、そのためには大きな手間がかかります。そこで、とある公務員がパラシュートでビーバーを降下させるという方法を思いつきました。





第二次世界大戦後には各国でベビーブームが発生すると、それに伴い住宅の需要も増加しました。アイダホ州でも同様に、ビーバーの生息地であったペイエット湖周辺にも住宅が増え始め、アイダホ州漁業狩猟局はビーバーの保全に頭を悩ませることになりました。

ビーバーの保全は、自然の保護という面でも毛皮資源という面でも重要な課題でした。再配置先として、現在は国立公園の一部となっているチェンバレン・ベイジンが選定されましたが、一つ問題がありました。輸送手段が無かったのです。

当時、チェンバレン・ベイジンの周辺には道路がなく、ビーバーを輸送するには馬やラバなどを使い、数日かけて移動するしかありませんでした。しかし同じ動物であるビーバーを乗せると不審がって言うことを聞かなくなることがありました。また移動に適しているのは夏季なのですが、暑い中を長時間かけて輸送すると、ビーバーが弱ってしまうという問題もありました。

そこで、当時漁業狩猟局の職員であったエルモ・ヘーター氏は「パラシュートを使って直接空中投下すればよい」という画期的なアイディアを思いついたのです。戦争直後ということでパラシュートは軍から払い下げで安く購入することができ、航空機の速度であれば多少遠隔地でも時間はかかりません。

あとはビーバーが降下に耐えられるかどうか。最初は柳を編んだコンテナがテストされました。ビーバーのエサでもあり降下した後自分でかじって出てくるだろうというアイディアだったのですが、機内や降下中に出てきてしまいトラブルになる可能性があったのでボツに。最終的には吊り下げ時にはロープのテンションで閉じ、着地するとテンションが抜けて開くクラムシェル式の木製コンテナが採用されました。なお、テストにはジェロニモと名付けられたビーバーが使用され、何十回ものテストから生還した結果から、計画にゴーサインが出されました。

勇敢なジェロニモ氏によるコンテナテストの動画。
Parachuting beavers. Video courtesy of Idaho Department of Fish and Game – YouTube

その後、合わせて76匹のビーバーの移動に成功したとのこと。ジェロニモ氏には、メス3匹とともに最初の移住者となって現地に空中投下される栄誉が与えられたということです。

先程のテストを含む、計画のドキュメンタリーのフル動画はこちらから。
Fur for the Future – YouTube

パラシュート付きとはいえ、空中から投げ落とすのはちょっとかわいそうと思うかもしれませんが……人間と野生動物はうまく住み分けるのがとても大事です。
飼い犬に見せつけるようにピザを食べる大変腹立たしい野良ビーバーの動画 – DNA

ソース:Parachuting Beavers Into Idaho’s Wilderness? Yes, It Really Happened | Boise State Public Radio